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名古屋を遊ぶ知のサロン、 やっとかめ文化祭に「ナゴヤ面影座」建立。(2016年10月)

TEXT : 神野 裕美

2017.10.29 Sun

あなたが誰かを思うとき、心に立ち顕れてくる面影は、その人の何を示しているのだろう。面影はある時点の記憶ではなく、変化と根源を併せ持つおぼろげなもの。そんな示唆から名古屋の面影に想いをはせる座が、2016年10月30日、やっとかめ文化祭の中で誕生した。その名も「ナゴヤ面影座」。そこには内外から知を集結させ、継続的にナゴヤ学を構想する場にしたいとの狙いがある。


ナゴヤ面影座は八句の連歌に見立てた8回シリーズ。今回はその第1回。お題は円空。舞台は、日本最大の像も含め約1200体の円空仏を収蔵する荒子観音寺。文化功労者で名古屋市出身の歌人・岡井隆氏を発句人に、日本研究の第一人者で知の巨人・松岡正剛氏を客人に、二人の円空論が交わされた。

 

旧きナゴヤの面影を慕いて
冒頭、岡井氏の詩がご本人の朗読で披露される。歌われたのは、空襲で焼きつくされた、今は亡き「ウアナゴヤ」。氏のやわらかな声の彼方に、旧きという意味のドイツ語を冠したナゴヤの戦前・戦中の面影が浮かびあがる。近世の気配、芸どころの暮らし、やさしい女性の面差しをした街…。もはや見ることはできないが、確かにここにあったウアナゴヤ。岡井氏の話を聞きながら、その淡い輪郭を、座の誰もが思い描いたのではないだろうか。

円空の和歌に前衛と古典を見る
生涯に12万体もの仏像を彫ったとされる円空は、和歌も数多く残している。その作風を岡井氏は「素直な歌。まるで言葉という鋭いノミで削りだしたような」と評し、松岡氏は「決して技巧を凝らしたものではないが、前衛と古典が混在する」と。そして、アララギ派に属しながら反旗を翻し、前衛短歌運動を牽引した岡井氏の歌にも、「やはり前衛の鋭さと、根源であるアララギ派の伝統が息づく」と語る。

一方、岡井氏はヴァレリーやマラルメなどフランスの詩人の名をあげ、日本の短歌にも西洋が入っている、と自身の歌づくりをひも解いていく。前衛と伝統、日本と西洋。相反するものを共存させる合わせ技。それは日本の文化そのものと言える。

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WRITER PROFILE

神野 裕美

1998年よりフリーのコピーライターとして活動。2010年、クリエイティブディレクターとともに株式会社SOZOS(ソーゾーヅ)設立。新聞、ポスター、パンフレット、Webといった各種コミュニケーションツールの企画立案・制作、ロゴ制作、ネーミングなどを手掛けている。最近はまちづくり支援の仕事も多く、なごやのまちを盛り上げるべく、多角的な視点からなごやの魅力を再発掘中。インフォグラフィックでなごやめしの紹介も。
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