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「ない」ものを見つける、見つめる。 あわいの時代の新しい視座。

TEXT : 神野 裕美

2018.02.12

ある日、ふと扉を開けたら、そこには時間軸の異なる世界が広がっていた。
2017年7月29日に開催された「ナゴヤ面影座第二講」。その日、大須・大光院は、古代と未来を結ぶ異界の入口と化した。案内人は、下掛宝生流ワキ方能楽師・安田登氏。漢詩漢文の専門家として、漢和辞典の編纂にも携わったという異色の経歴の持ち主だ。現在も能楽師として活躍する傍ら、古代文字の研究者として活動し、『論語』を読む寺子屋も全国各地で開催している。今回のナゴヤ面影座は、能、シンギュラリティ、甲骨文字、論語、呼吸法と博学多才な氏に導かれて異界を巡る旅となった。

あの世とこの世を分く
講のテーマは、「あわい」。あわいとは、内と外をつなぐ場所。住宅で言えば縁側のような空間を指し、内でもあり、外でもある。そんなあわいの世界の住人が、能楽のワキ方だ。安田氏によると、ワキとは脇役の意味ではなく、もともとは「分く」から来た語。能楽の夢幻能では、霊的な存在であるシテ方がワキの前に現れて物語を語り始めるが、あわいに住むワキがいればこそ、あの世とこの世に分けられた人が会うことができるのだという。
間(あいだ)とは異なる、あわいの感覚。重なりあいながらも、交わることのないもの。それは、まさに今、私たちが感じている時代感覚ではないだろうか。

 

 

シンギュラリティの時代を前に
安田氏は、現代を「あわいの時代」と呼ぶ。2045年、シンギュラリティ(技術的特異点)の到来が予測されている。全人類を凌駕する超越的な知性を持ったAI(人工知能)の誕生。今までの常識が通用しない時代を前に、漠然とした不安を抱いている人も多いだろう。しかし安田氏は次のように語る。「人類は過去においても常識が一新されるあわいの時代を乗り越えてきた。メソポタミア文明では楔形文字が、中国文明では甲骨文字が生まれたが、紀元前の人類にとって、文字はまさにAIだった」と。
氏の言うとおり、人は文字を手に入れることで記憶を外在化し、脳の領域を知的な活動に存分に使えるようになった。そう、あわいを越えて、人類は大きな一歩を踏み出したのだ。

 

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神野 裕美

WRITER PROFILE

神野 裕美

1998年よりフリーのコピーライターとして活動。2010年、クリエイティブディレクターとともに株式会社SOZOS(ソーゾーヅ)設立。新聞、ポスター、パンフレット、Webといった各種コミュニケーションツールの企画立案・制作、ロゴ制作、ネーミングなどを手掛けている。最近はまちづくり支援の仕事も多く、なごやのまちを盛り上げるべく、多角的な視点からなごやの魅力を再発掘中。インフォグラフィックでなごやめしの紹介も。
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