古典の日・邦楽名古屋舞台

人間国宝だって恋愛ドラマ。

男と女のアレコレや惚れた腫れたの恋バナは今も昔も同じこと。
百年たっても千年たっても、男と女は恋と別れを繰り返すのですネ。
伝統芸能のテーマもやはり恋愛ドラマが圧倒的に多いのです。
11月1日・古典の日には、なんと人間国宝の常磐津一巴太夫が、名古屋心中
『睦月連理』で舞台に立ちます。
80歳を過ぎてなお男女の悲哀を語る一巴太夫に期待が高まります。

  • 平曲 : 宇治川
  • 三曲合奏 : 黒髪・新娘道成寺
  • 常磐津 : 睦月連理
  • 長唄 : 喜撰・名古屋甚句の踊り・金の鯱ほこ・さわぎ
  • 解説 : 安田文吉
  • 司会 : 古池鱗林

常磐津「名古屋心中・睦月連理」

近世浄瑠璃の大スター・宮古路豊後掾が名古屋滞在中の享保18年(1733)に書き下ろしたと言われる演目です。
闇森八幡社で起きた畳屋喜八と遊女小さんの心中未遂事件をもとに制作し自演しました。
初演は空前の大当たりとなり、広小路が狭小路といわれるほど大入りを続けました。後に豊後掾は江戸に下り、この作品で豊後節は爆発的な当たりをとります。
時に江戸幕府は心中も心中舞台も禁止令を出していましたが、喜八と小さんだけは軽罪ですまされ、豊後掾も黙認されたということです。
それは都市に遊興を望んだ尾張徳川家七代藩主・宗春の威光だといわれています。

人間国宝  常磐津一巴太夫

現在の常磐津浄瑠璃の第一人者。
本名明田昭。
幼少より観世流謡曲、長唄三味線を学び、1948年から常磐津文字一朗、三世林中、文蔵、吾妻太夫に学ぶ。52年に一巴太夫。67年歌舞伎の立語り。
95年に常磐津節浄瑠璃の重要無形文化財保持者(人間国宝)の認定を受ける。

  • 平曲「宇治川」
    今井検校勉
    源頼朝の命令で、義仲を追討するため上京を志す義経の軍の中で、佐々木と梶原の両雄二人の先人争いが繰り広げられます。
    出陣の面々の氏名を連ねる部分から、捨の曲節のゆえに畳みかけるように勇壮であり、一種の変調をみせる「音曲」をもはさみ込む捨によって両雄の動きを力強く語る。
    比較的短い曲ですが、合戦曲の中の代表曲の一つです。
  • 三曲合奏「黒髪」「新娘道成寺」
    野村祐子
    鐘の音にもの想う2曲~恋しい人と過ごした夜を思うと、独り寝の心も知らず朝を告げる鐘の音は遣瀬無いわ、と歌う黒髪。
    修行僧恋しさのあまり蛇身となって、釣鐘に隠された僧を妬き溶かすという安珍清姫の物語をもとにした新娘道成寺は「鐘に恨みは数々ござる・・・」と歌い始める曲。
    古の日本人は、女心を鐘の音に託すのがお好き?
  • 長唄「喜撰」
    「喜撰」は、天保3(1833)年作曲のもので、紀貫之が選ぶ六歌仙、在原業平、喜撰法師、僧正遍照(昭)、文屋康秀、大伴黒主、小野小町の六名歌人を各々曲に表した曲があり、今回は、その中の喜撰を演奏します。本来は清元との掛け合いで演じますが、今回は長唄のみで清元部分と長唄部分を演じ分け、洒脱な曲になっています。清元と長唄の違いをお聴きください。
  • 小唄「宮の熱田」
    春日やよ恵
    「宮の熱田」は、平成22年4月に開催する名古屋小唄大会30回を迎えるにあたり、名古屋を代表し、後世に歌い継がれる作品を残そうと、私の師匠・常磐津一巴太夫(人間国宝)に作曲を、地元郷土史家・飯本創氏に作詞を依頼して完成しました。そして平成22年3月5日、一巴太夫と名古屋小唄会代表者らで、熱田神宮へ参拝奉納しました。
  • 名古屋甚句の踊り「金の鯱ほこ」「さわぎ」
    名妓連組合
    甚 金丸・福松・ひと美・甚 布久・きく若・小華・甚 玉龍・笑子・桃太郎・きく一・典子・ひこ乃
  • 司会 古池 鱗林
    古池 鱗林
    1999年東海ラジオレポートドライバーとしてタレント活動を始める。その後、話芸の魅力に惹かれ、講談師水谷ミミ(風鱗)の紹介で上方講談協会会長、旭堂南鱗の講談道場に通い、2009年、旭堂南鱗一門として認められ、講談師デビュー。現在は大須演芸場、東海ラジオを中心に活動中。
  • 解説 安田 文吉
    安田 文吉
    名古屋市生まれ。幼少の頃より、常磐津節、日本舞踊を習う。
    名古屋大学文学部にて、歌舞伎、浄瑠璃の研究を行い、卒業後、同大学院文学研究科に進学、博士課程単位修得。昭和52年あ4月、南山大学文学部専任講師となり、助教授を経て、平成元年4月、教授となる。
    現在、東海学園大学人文学部人文学科教授。 また、平成8年5月、名古屋大学大学院文学研究科より文学博士(論文博士)を授与される。

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